約 1,077,071 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1226.html
(音声のみお楽しみ下さい) 「……ねえホワイトスネイク」 「ドウシタマスター」 「これはどういうことかしら?」 「昼食ハ既ニ、ホトンド食ベラレテシマッタヨウダナ。 スープトカモキット冷メテイルダロウ」 「……誰のせいなんでしょうねー」 「ソレハ錬金ニ失敗シタマスt」 ドグシャアッ! 「オゴォォッ!」 「あんたが『でぃすく』だの『魔法の才能』だの話し始めたからでしょうがぁあああああああああああ!!」 5話 つまり、こういうことである。 片付けをやっとこさ終えたルイズとホワイトスネイクは、他の生徒より大分遅れてアルヴィーズの食堂に入った。 そしてそこでお腹を空かせたご主人様ことルイズが目にしたのは―― もうほとんど食事が残っていない大皿と、湯気一つ上がらない、きっと冷え切っているであろうスープである。 もちろんお腹をすかせたご主人様はこんなものを見せられた日にはカンカンである。 まあ元はと言えば錬金を派手に失敗して教室を悲惨な状態にしたルイズにこうなった原因はあるのだが、 上記の通りルイズはそれをホワイトスネイクになすりつけた。 責任転嫁である。 その上ホワイトスネイクのスネを蹴っ飛ばしている。全力で。 ルイズとしては、しょうがないんだもん、あたしは魔法が使えないんだもん、みたいな感じでスネてるんだろうが、 責任転嫁された挙句蹴りを食らわされたホワイトスネイクとしてはたまったものではない。 しかし……相手が自分の主人である以上手を上げるわけにもいかず、結局堪えるホワイトスネイクであった。 スタンドの悲しい定めである。 蹴っ飛ばされた方の脚を抱えてケンケンしながら、 ヨーヨーマッもこんなかんじでいつもDアンGにぶん殴られてたに違いない、と思った。 そして一瞬ヨーヨーマッに同情しかけるが、ヨーヨーマッがドMだったことを思い出してすぐに止めた。 こうしてルイズが一人で怒っていて、ホワイトスネイクがケンケンしているところに―― 「あの……ミス・ヴァリエールでしょうか?」 いくらか遠慮のかかった声がした。 その声にルイズとホワイトスネイクが振り向く。 はたして、声の主はメイドであった。 彼女の髪の色は黒。 他のメイドや生徒と比べれば、ここでは珍しい色である。 「何? メイドがわたしに何の用?」 ルイズが思いっきり不機嫌な声でメイドに応える。 腹へっていても多少の愛想は必要だと思うホワイトスネイク。 そしてメイドの方にも、ルイズの不機嫌が分かったらしく、 「あ、あの! その……も、申し訳ありません。 ミス・ヴァリエールが昼食の席に現れなかったもので、お腹が空いてるんじゃないかと……」 「そーよ! もう食事はほとんど無くなっちゃってるし……おかげでこっちはお腹がペコペコよ!」 「で、ですから、大したものは用意できないかもしれませんが、昼食の方を用意しましょうかと……。 他の貴族の皆様がお召し上がりになったものと同じものは用意できませんが……」 これはありがたい。 今朝のようなアホみたいに豪華な食事は期待できないだろうが、それでも十分だ。 お腹をすかせた我が主人たるルイズにとって単純にプラスになることだし、 またこのままルイズが不機嫌なままだと、いつスネを蹴っ飛ばされるか分かったものではないので自分にとってもプラスである。 そうホワイトスネイクが考えていた矢先。 「イヤよ。わたしがいつも昼食で食べてるのと同じのじゃなきゃ、イヤ」 ホワイトスネイクはため息をつきたくなった。 腹減ってるのはしょうがないとして、何故そこで意地を張る。 どうせこのワガママなご主人様のことだ。 貴族はこんなもの食べないとかなんたらかんたら言うんだろうな、とホワイトスネイクは思った。 でもそれを言うとまたスネを蹴っ飛ばされるだろうから、口には出さない。 そう思っていたそのとき―― ぎゅるるるるるるるる……… ルイズのお腹が盛大な悲鳴を上げた。 そしてその音を出したのが自分だと分かると、ルイズは羞恥心で顔を真っ赤にして周囲を見回す。 周りの生徒が聞いていなかったのを確認してルイズはほっと一息ついた。 今のお腹の音を聞かれるのがイヤだったようだ。 食堂に残っている生徒達は皆談笑に夢中で、ルイズには気づかなかったことが幸いした。 まあ、あまり上品な音じゃなかったからな、と思うホワイトスネイク。 そして確認作業を終えたルイズはメイドの方に向き直ると、 「さ、さっきのは取り消し! あと、えっと、で、出来るだけ上品なものを作りなさいよ! 貴族が食べるものなんだからね!」 と、これまた顔を真っ赤にしていった。 何もそこまで恥ずかしがらずとも、と思うホワイトスネイク。 メイドの方もそんなルイズを見て困ったような笑みを浮かべながら、 「かしこまりました。スープの方は今から温め直しますので、そちらで少しだけお待ち下さい。 あ、あと使い魔さんの分も用意させていただきますね」 と言ってお辞儀すると、ぱたぱたと厨房の方へ走っていった。 「何故、マスターハアノ小娘ノ提案ヲ最初ニ断ッタ?」 「貴族は平民が食べるようなものは食べないのよ。下品だから」 「平民? アノ使用人ノ小娘ノコトカ?」 ホワイトスネイクが聞き返す。 「そう、平民。魔法を使えない平民は、あのメイドみたいにわたしたち貴族に奉仕するのよ」 「ナルホド、ナ」 ホワイトスネイクは朝食の席で、自分の姿が使用人に見えていないことは分かっていた。 そして一方、貴族――つまりメイジだが、そいつらには自分の姿が見えている。 (メイジニハ私ノ姿ガ見エル。シカシ使用人、ツマリ平民ニハ私ノ姿ハ見エナイ、トイウコトカ) そのように、ホワイトスネイクは納得しかけて――先ほどのメイドの言葉を思い出した。 (イヤ待テ。サッキアノ使用人ハ『使い魔さんの分も用意させていただきますね』トカ言ッタナ。 ダガ、アノ使用人ハマスターノ言カラシテモメイジデハナイ。 ダトスレバ……) ホワイトスネイクに、興奮に近い感情が湧き上がってくる。 (アノ使用人……スタンドノ才能ヲ持ッテイルノカ?) そして数分後。 ルイズ以外には誰も席に着いていないがらんとした食堂に、ルイズのためだけの食事が並んだ。 ……とは言っても、スープの他にあるのはシチューとローストした鶏肉だけだが。 しかし、量だけは十分ある。 というか二人分は十分ある。 やっぱりホワイトスネイクが見えているらしい。 「どうぞ、お召し上がり下さい」 メイドが笑顔で言う。 ルイズはメイドの声にそっけなく頷いて応えると、目の前のシチューをスプーンですくって、口に運ぶ。 料理の方も見た目には気を使って皿に盛ってはあったが…… やっぱり見た目がボチボチだったからそれが不満なんだろうか、と思うホワイトスネイク。 それでも、突き返さないだけまだマシだと思うことにした。 やっぱり腹減ってると怒る気力もなくなるんだろうか。 しかし、シチューを食べたルイズの感想は―― 「あら……美味しいじゃない!」 感嘆した調子で、ルイズは言った。 「そう言っていただけると嬉しいです」 メイドが嬉しそうに顔をほころばせて言う。 だがルイズは、一口食べて美味しいと分かったからだろうか、 それすら聞こえない様子で、ひたすら食事を口の中に運んでいた。 とはいえ、ガッつくような真似はしない。 由緒ある家柄の出であるルイズは、どんなにお腹が空いていてもテーブルマナーは守るのだ。 その分食事の時間は長くなるが。 そうしてルイズが食事を取っていると―― 「あの……使い魔さんは、お食事をなさらないんですか?」 メイドが、ホワイトスネイクに声をかけた。 「イヤ、イイ。私ハコウイッタ形式ノ食事ヲ取ラナイノダ」 「じゃあどんな食事をなさるんです?」 当たり障りの無いように断ったホワイトスネイクだったが、メイドはさらに深く聞いてきた。 「そうですか、分かりました」で収めればいいものを、と思うホワイトスネイク。 さて、どうするべきか。 自分がスタンドであることを話せば、このメイドにスタンドの才能があるところまで話さなければならなくなるだろう。 まだこちらの世界に来たばかりで、まだ状況のいまいち掴めていないホワイトスネイクとしては、 出来るだけ不要なトラブルは避けたい。 「スタンド使いとスタンド使いは引かれあう」というルールもあることだし、 今の段階でヘタにこの使用人に、スタンドのことは話したくない。 しかし……他の平民の使用人には見えない自分の姿が、この使用人の小娘には見えているのだ。 いずれこの使用人自身も、自分が他の平民とは異なることを知るだろう。 どうするべきか。 彼女にスタンドの才能があることを伝えるべきか、それとも言わずに置くべきか。 しばらく考えたホワイトスネイクは―― 「私ハ空気ヲ食ベル」 誤魔化すことにした。 勿論大嘘である。 空気食って生き延びる人型生物なんているわけ無いだろ常識的に考えて。 しかしこのメイドは―― 「そ、そうなんですか……」 真に受けた。 純真なのか、だまされやすいのか、いずれにしても、 「はいそうですか」で信用するのはどうかとホワイトスネイクは思った。 まあ深く突っ込んでこないのはこちらとしてもありがたいが。 ホワイトスネイクがそんなことを考えていた、そのときだ。 「ごちそうさま」 食事をしていたルイズから声が上がる。 どうやら食べ終わったらしい。 そしてさっきホワイトスネイクが適当なことをメイドに言ったことに反応しなかったあたり、 かなり集中して食事していたようだ。 よほど、お腹がすいていたんだろう。 そう思って、ホワイトスネイクが下を見下ろすと―― 「……全部食ベタノカ」 「だってお腹すいてたんだもの」 メイドがホワイトスネイクの分にと用意した食事まで、さっぱりなくなっていた。 つまり、二人分をきっちりルイズは食べたのである。 いくらなんでもあれだけ食べたら太りそうなものだ。 というか、あれが普通なのか? 「食ベ過ギジャアナイノカ、マスター?」 「別に食べすぎじゃないわよ。いつも歩いてるから太らないし」 そういう問題じゃないだろう、と思うホワイトスネイクであった。 「あなた、名前は何ていうの?」 ルイズがメイドに尋ねる。 「シエスタといいます」 「そう。じゃ、ありがと、シエスタ。おかげで助かったわ」 「い、いえ! そんな、滅相も無いです!」 「いいのよ、そんなに縮こまらなくて。あと、今回の恩は覚えておくわ」 「ミス・ヴァリエール……」 メイド――シエスタと名乗ったが、彼女が嬉しそうに言う。 「そんなに驚かないで。ヴァリエール家の女が恩知らずだなんて思われたら、 私の方が恥ずかしい思いをすることになるもの。 別に特別なことじゃないわよ」 「そ、そそそうですか。あ、ありがとうございます!」 シエスタがかなり恐縮しながら頭を下げる。 その様子から、 (ココマデ卑屈ニナルトハ……ヨホド、平民ニトッテ貴族、イヤ、メイジハ恐怖スベキ対象トナッテイルノダロウナ) そんなことをホワイトスネイクは考えた。 「で、でででは、わわ私はこれで失礼します!」 そんなことを言って、メイドがまた深々と頭を下げると厨房の方へ走って行った。 ちょうどそのとき。 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰とつき合っているんだよ!」 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つき合う? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。 薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 こんな会話が聞こえた。 声の方向に目を向けるホワイトスネイク。 するとそこには金髪の優男と、それを取り巻く数人の男子学生が歩きながら談笑していた。 場所はちょうどシエスタが向かった厨房の近く。 「マスター、アレハ誰ダ?」 「あいつはギーシュよ。色んな女の子のところを、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしてるナヨナヨしたヤツ。 わたし、あんまりあいつのこと、好きじゃないのよね」 「アレニ惚レル女ハアマリ幸福ニハナラナイダロウナ。 アレハ女ニ気苦労ヲカケルタイプダ」 「でしょうね。まったく、モンモランシーも何であんなのにゾッコンなのかしら……」 ギーシュを眺めながらそんなことをルイズとホワイトスネイクが話していると。 ぽとり、とギーシュのポケットから何かが落ちた。 何か小瓶のようなものだ。 そしてちょうど厨房に入るところだったシエスタがそれを見つけて拾い上げる。 「これ、落としましたよ」 そう言ってシエスタがギーシュに小瓶を差し出す。 だがギーシュは取り巻きとの会話に夢中で気づかない。 いや、今のシエスタの声はそんなに小さなものではなかったし、「気づかないフリをしている」とするのが正しいだろう。 しかしシエスタは、自分の声が小さかったからギーシュは気づかなかったのだと、誤解した。 そしてもう一度、 「あの、すいません。これを落としましたよ」 そう言って、改めてギーシュに小瓶を差し出すと、 「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」 ギーシュはそれを否定した。 しかし自分のポケットから落ちたものを自分のものじゃないと否定するとは、無茶もいいとこである。 そして実際、それは裏目に出た。 「おお? その香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」 「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分だけの為に調合している香水だぞ!」 「そいつがギーシュ! お前のポケットから落ちてきたってことは、 つまりお前は今モンモランシーと付き合っている! そうだな?」 「違う違う違う! いいかい、彼女の名誉の為に言っておくが……」 取り巻きたちに問い詰められたギーシュがそこまで言ったところで…… 一人の女子生徒がギーシュの元へぱたぱたと走り寄ってきた。 女子生徒のマントの色は、ギーシュやルイズのそれとは違う。 (ソウイエバ朝食ノトキ、アノ色ノマントヲ来タ連中ハ右側ノテーブルニツイテイタナ。 左側ニハ紫色ノマントヲ来タ連中ガイタ。 アノ小娘ガ茶色ノマントトナルト……1年生ハ茶色、3年生ハ紫色、トイッタトコロカ) そんなことを考えながらホワイトスネイクが見ていると、 「ギーシュさま……」 そういって、女子生徒がボロボロ泣き始める。 二股かけられてたことを、今のやりとりで理解したらしい。 「やはり、ミス・モンモランシーと……」 「違うんだよ、ケティ! 彼らは誤解してるんだ。 僕の心の中に住んでいるのは君だk」 ブワッシィィーーーーン! 「ぶげぁっ!」 有無も言わさぬ強烈なビンタが、ギーシュの頬に叩き込まれたッ! そして―― 「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証拠ですわ! さようなら!」 そう言うと、女子生徒は泣きながら行ってしまった。 女子生徒の姿が見えなくなった頃、騒ぎを聞きつけたのか、女子生徒がもう一人現れた。 顔つきを見る限り、おおよその状況は理解しているらしい。 というか、間違いなくギーシュをぶん殴るなり何なりするつもりの顔だ。 「あれがモンモランシー。 あの子、おだてられるのが好きなのかしらね。 いっつもギーシュの歯の浮くようなお世辞で顔を赤くしてるのよ」 テーブルに着いたまま、ホワイトスネイクと一緒に様子を見ていたルイズが、興味なさそうに言う。 「シカシマスター。コノママ放ッテオイテイイノカ?」 「どういうことよ?」 「アノ小僧……確カギーシュトカ言ッタナ。 ギーシュハ今カラアノモンモランシートヤラカラモ、何ラカノ制裁ヲ受ケルダロウ」 「でしょうね。で、それがどうかしたの?」 「私ガ言ッテルノハ、ソノ後ノコトナノダ。 状況ヲ簡潔ニ整理スレバ、ギーシュハ友人タチノ目ノ前デ二股ガ露見シ、アノヨーニフラレタ事ニナル。 果タシテ、コノママ自分ガ惨メナママデ済マセラレルカナ……?」 「え……ちょ、ちょっと待って! じゃあシエスタが……。でも、そんなのムチャクチャよ! フられたのはギーシュのヤツが二股かけてたからじゃない!」 「ダガ、元ヲ辿レバシエスタノ親切ガ招イタ事ナノダ。 ギーシュガシエスタニ責任ヲナスリツケナイ、トハ言イガタイナ」 「…………」 ちなみに、ホワイトスネイクにここまでの推測ができたのは、冒頭のルイズの理不尽な制裁があったからに他ならない。 ホワイトスネイクはあの一件で、この世界の理不尽を理解していたのだ。 貴族ならこれぐらいはやるだろう、と。 そのように考えられるようになっていたのだ。 何とも皮肉な話である。 そして現場では―― 「誤解だよ、モンモランシー! 彼女とはただ、一緒にラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで……」 ギーシュが首を振りながら疑惑を否定する。 だが、額には冷や汗が伝っている。 今時分が置かれた状況がディ・モールトヤバイことは自覚しているようだ。 「やっぱり……あの一年生に手を出してたのね」 「お願いだよ、『香水』のモンモランシー! 咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りでゆがませないでくれ! 僕まで悲しくなってくるじゃあn」 ドグシャアッ! モンモランシーの蹴りが、ギーシュの股間に炸裂したッ! 「おごおおぉぉっ……」 呻き声を上げて、がっくりと膝を突くギーシュ。 なんというか、ギーシュはもうアワレすぎて何も言えない状態になってしまった。 それをモンモランシーは上から見下ろして、 「嘘つき!」 そう叫ぶと、肩を怒らせながら去っていった。 「お、おい。大丈夫か、ギーシュ」 取り巻きが心配そうにギーシュに言う。 ギーシュは荒い息をしながら、取り巻きの手を借りて立ち上がると、 額にびっしり浮いた冷や汗をハンカチでぬぐい、 「あの、レディたちは、ば、薔薇の、存在の、意味を、理解して、いないようだ」 やはりキザったらしい、芝居がかった口調で言った。 そのまますらすら言えたならもう少しマシだったんだろうが、 それほどにモンモランシーの放った金的は強力だったらしい。 そうして、ギーシュが股間の痛みに耐えながら立っていたとき。 「あ、あの……し、失礼します」 いきなり訪れた修羅場に、呆然と立ち尽くしていたシエスタが声を上げた。 ホワイトスネイクはそれを聞いた瞬間、シエスタが地雷を踏んだことを理解した。 そしてシエスタが背を向けて去ろうとすると―― 「待ちたまえ」 ギーシュがその背中に声をかけた。 その声に、びくっとシエスタは震えると、そろそろと振り向き、 「な、何でしょうか?」 震える声で、シエスタが言った。 「君が軽率に……香水の瓶なんか拾い上げてくれたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついたぞ! ……どうしてくれるんだね?」 「も、申し訳ありません! お許し下さい!」 シエスタはひたすら頭を下げる。 だが、仲間の前で恥をかいたギーシュは収まらない。 「どうやら君には、貴族へ無礼を働くとどうなるか、身をもって知る必要があるみたいだな……」 そう言うと、ギーシュはシャツに刺した薔薇の造花を抜く。 薔薇の造花はギーシュの杖である。 早い話、ギーシュはシエスタに魔法を使おうとしているのである。 その様子をテーブルから見ていたルイズは、 「信じられない……ギーシュのヤツ、シエスタに責任をなすりつけるどころか、魔法まで使うなんて!」 マスターが言えたことじゃないな、とホワイトスネイクは思ったが、そこは黙っておいて 「私ノ言ッタ通リニナッタナ。サテ……ドウスル、マスター?」 ルイズに決断を促した。 シエスタには申し訳ないが、仮にルイズが「何もしない」と言ったなら、ホワイトスネイクは放置するつもりでいた。 偶然にも見つけたスタンドの才能の持ち主を失うことにも多少厳しいものがあるが、 それでもスルーする選択肢も頭の中に入れていた。 しかし、ルイズはホワイトスネイクの言葉に頷くと、 「命令するわ、ホワイトスネイク。シエスタを助けなさい。 でも、ギーシュに攻撃しちゃダメ。あんたが攻撃されるまではね」 そう命令した。 その内容でさっきまでの自分の心配が杞憂だったことが分かり、ホワイトスネイクは内心に苦笑した。 そして、もう一度命令の内容をなぞる。 ギーシュに攻撃するな、とわざわざ言うということは、ルイズ自身になにか考えがあるということ。 その点に関しては、自分が考える必要はないだろう。 そう察したホワイトスネイクは、 「了解シタ、マスター」 と、それだけ言うと、ルイズの元から、風のようなスピードで離れる。 そして、杖を抜いたギーシュに跪いて怯えていたシエスタの前に、音も無く降り立った。 「……何だ? お前は」 ギーシュが訝しげにホワイトスネイクを見て、言う。 そして数秒後、授業中にペリッソンをぶちのめした、ルイズの使い魔だと分かると―― 「お、お前は……ルイズの、使い魔か! な、何だ! 何の用だ!」 瞬く間に取り乱し始めた。 ほんの一言、ルイズのことを「ゼロ」と言っただけのペリッソンを有無も言わさず叩きのめした、 このホワイトスネイクの恐ろしさは、ギーシュも自分の目でよく分かっていた。 「マスターノ命令ヲ遂行スルタメダ。『シエスタを助けろ』ト命令サレタノデナ」 ホワイトスネイクの言葉で、ギーシュは長机に着いていたルイズを見つけると、そちらへ目を向ける。 「どういうことだ、ルイズ! 何で君が首を突っ込むんだ?」 「あら、そんなの決まってるわ。私はそのシエスタに恩があるもの。 たとえシエスタが平民だろうと変わりは無いわ。受けた恩は、返すものよ」 当然の事と言わんばかりの調子で言うルイズに、ギーシュはますます苛立ちを募らせる。 そして、ルイズの言った「受けた恩は、返すもの」と言う言葉に、シエスタははっとしたようにルイズを見る。 「大体悪いのはあんたよ、ギーシュ。 二股なんてかければ、いずればれるに決まってるじゃない。 なのに、あんたはその責任を自分で取らないばかりか、シエスタにその責任をなすりつけようとした……。 貴族のすることじゃないわよ、ギーシュ」 そのルイズの言葉で、ギーシュは完全に頭に血が上った。 常日頃から「ゼロ」と呼んでバカにしているルイズに、ここまで言われたのがガマンならなかったのである。 「……いいだろう。そこまで言うのなら、ルイズ。君も覚悟できてるんだろうね?」 「覚悟?」 「『決闘』だ、ルイズ! 僕は君に、決闘を申し込む!」 きた、とルイズは思った。 シエスタを私刑に処しようとするギーシュの前に立ちはだかるということは、 真っ向からギーシュと敵対することを意味する。 そしてこういう場合、互いに決着をつけるには……決闘しかない。 決闘で、互いが納得するまで戦うしかないのだ。 たとえ「貴族同士の決闘を禁じる」ルールがあったとしても、 昼食の後に授業が控えていても、それ以外の決着は無い。 「いいわよ。場所は?」 「ヴェストリの広場だ。用意が出来たらすぐに来てもらおう!」 「用意? そんなの、いらないわよ。 杖はここにあるし、わたしにはやる気もある。 準備が必要なのは、あんたの方じゃないの?」 「まさか。君がレディだから、ほんのちょっぴり気遣っただけさ。 だが、それも必要ないというなら、今すぐにでも始めようじゃないか。 でも……」 そこでギーシュは言葉を切ると、 「君にはその不躾なメイドを慰めるなり何なりする仕事が残ってるだろう? それが終わったら、来るといい。僕は先に行っているよ」 そう言って、取り巻きたちと一緒に行ってしまった。 やがて、食堂にはルイズとシエスタ、ホワイトスネイクだけが残った。 「あ、あの、ミ、ミス・ヴァリエール……」 シエスタが震えた声でルイズに声をかける。 「心配しないで、シエスタ。あんなキザったらしいことだけしか脳が無いヤツに、わたしは負けたりしない。 それに、約束したでしょう? 『恩は返す』って。 わたしは約束は破らないわ」 「そ、その、でも……」 「大丈夫よ。あなたは何も間違ったことはしちゃいないし、後悔する必要も無い。 だから、あなたは今までどおりでいいのよ」 「は、はい! ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」 シエスタが声を震わせて、何度もルイズに頭を下げる。 ルイズはそんなシエスタを尻目に、ホワイトスネイクを引き連れて食堂を出た。 食堂を出たところで、不意にホワイトスネイクが、 「ソウイエバ、ダ。マスター」 「何よ?」 「何故、先ホド『ギーシュに攻撃するな』ト命令シタ?」 「『決闘』でぶちのめさなきゃ、意味が無いからよ」 「…………ナルホド、ナ。了解シタ、マスター」 正直、ホワイトスネイクにはよく分からない話だった。 敵がいるなら倒せばいい。 どんな方法を使ってでも、奇襲でも、だまし討ちでも、何でも。 それが、プッチ神父とともにあったころのホワイトスネイクだったからだ。 障害を突破するのに、手段は選ばない。 「目的」に到達さえ出来れば、その過程で何が起きようと関係の無いこと。 それが、プッチ神父の信条であり、ホワイトスネイクの信条だった。 しかし……今の主人であるルイズは違う。 過程を大事にして、その上で結果に到達しようとする。 過程においてさえも、プライドを高く保ち続ける。 プッチ神父とは逆の考え方だ。 だからこそ、ホワイトスネイクにはよく理解できない。 授業の片づけで、DISCによって魔法を使えるようになることを、拒んだことも含めて。 (今ハ……理解スル必要ハナイ。後デ、分カッテクルハズダ。 私ハマスターノ元ニ来テカラ、マダ1日ト少シシカ経ッテイナイノダカラ……) そう考えながら、ホワイトスネイクはルイズの後を追った。 二人の行き先は、ヴェストリの広場。 二人の目的は、決闘。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/708.html
「あんた、だれ?」 ルイズは、横たわる女…おそらく自分と年齢はそう変らないであろう女に対して言った。 女はかなり大胆、いや、かなり扇情的な格好をしていた。 ルイズの認識で言えばこんな格好をするのは酒場の町娘か娼婦くらいだろう。 「…ここはどこ?私はさっきまで飛行機に乗っていたはず…」 女はつぶやく様にいうとまるでルイズのことを無視したように立ち上がる。 「ルイズ、サモンサーヴァントで平民を呼び出してどうするの?」 周りの生徒がルイズを揶揄する、ルイズの顔にサッと朱が混じる。 「ちょっと間違えただけよ!!」 「間違いってルイズはいつもそうじゃん」 「さすがはゼロのルイズだ!」 周りの生徒たちが自分を嘲笑する声が聞こえる。ルイズは悔しそうに顔をゆがめた。 「…あんた、感謝しなさいよね、普通、平民が貴族にこんなことされるなんて…女でもまずないんだから」 ルイズは女の肩に手を伸ばすと…残念ながら女はルイズよりかなり背が高かったためにルイズは一生懸命つま先でバランスを取りながら…唇を重ね合わせた。 「……!?……!!」 女はルイズを突き飛ばすと左手を押さえながら叫んだ。 「スパイス・ガール!!!」 ルイズの目の前に恐ろしい亜人が現れルイズをにらみつけながら何かいっていた。ルイズはそれを恐ろしいと思いながらも美しいと感じた。しかし、やはり恐怖には勝てなかった。 ルイズは意識を手放した。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/811.html
マリコルヌめ……私にこんな服着せたのってやっぱり趣味なんじゃない。 まさか私を着せ替え人形みて~に考えてるんじゃあないでしょうね……ありえるのが怖いわ それでも、自分で着ないってだけまだマシね。それだったら本当に最悪だわ。キモすぎ。 やっぱり彼も貴族ってことかしら?でも、彼って他の貴族と違ってとっても紳士だわ。 私を奴隷扱いしないってだけ、まだマシね。彼に呼び出されてラッキーって事なのかも。 でも、こう言う趣味ってどうなんだろ?普通に考えたら変態よね。OTAKUってヤツだわ。 それでも彼は紳士だし、それでいて変態って……紳士…変態…変態…紳士……? 変態紳士。なにか矛盾してる気がするけど、なかなか良いネーミングね。彼のニックネームにしよう。 『私のことを呼んだかね?』 呼んでないわ。アンタ誰よ? それにしてもこの子…名前何て言ったっけ?たしか…ルイ・ズゥ?だったかしら。 ミス・エリエール?とかマリコルヌが言ってたわね。じゃあこの子のフルネームって ルイ・ズゥ・エリエールなのかしら?変な名前ね。なんだか可哀想だわ。こんな変な名前で。 『ところで、さっきから尻の穴が痒いんだが掻いてもらえないかね?』 ナイフでも突っ込んどきなさい。 それにしてもこの子、さっきから私のことチラチラ見てるけど何なのかしら? 私なにか彼女にしたかしら?記憶にないわ。 それにしても、涙目で上目使いにこっちを見るの止めてほしいわ。私が泣かしたみたいじゃない。 『私ならもっと啼かしてあげるがね』 字が違うわ。 あら?床から手が伸びてるわ。あの子の使い魔じゃない。あ、あの子が気付いた。 あの子使い魔を蹴っ飛ばしたわ。うわ、昼ごはん抜きだって可哀想に。 ………なんだか判らないけど、ナランチャのことを思い出すわ。 ナランチャが残飯漁りしてて、それを見かねたフーゴが食事を与えたって。 それからギャングに入ろうとして…ブチャラティに怒られて…私のことを自分と同じだって言ってくれたわね。 頭は悪かったけど……優しかったわ。でも…最後はあんな酷い死に方で…… 彼、幸せだったのかな?そうよね、みんなに囲まれて笑ってたわ。きっと幸せだったのよ。 天国に…学校があるのか判らないけど……もしあったなら、きっと…行ってるわ…… 友達も一杯できて…悪さしてアバッキオに怒られたりして……でも、幸せに…… ……マズイ……なんだかウルってきたわ……… 「どうしたんだい?トリッシュ」 何でもないわ。人の泣き顔見てんじゃあね~よ。 「これで涙を拭きなよ」 ……ありがとう、マリコルヌ。ところで、どうして私が鼻をかんだハンカチを大事そうに仕舞うの? 凄く不気味だわ。 そう言えば、私ってコイツにキスされたんだっけ。……ファーストキスだったのに…最悪だわ。 どうして私がこんなのと……ああ…また泣きたくなってきた…… あの変なヌメッとした感触……気分が悪くなってきたわ。 口の中にも何か突っ込まれたし……ひょっとして……まさか……舌、まで、入れ、られた? ………きっとそうね。そうなんだわ。ファーストキスがこんなので、オマケに舌まで…… 何だか死にたくなってきた………… 『なにトリッシュ?ファーストキスで舌まで入れられた?逆に考えるんだ、トリッシュ 「女としての悦びを教えてもらった」と考えるんだ。ところで私とキスしないかね?』 嫌よ。 あら?向こうが何だか騒がしいわね。あの赤い髪の女のところに人が集まってるわ。 男ばっかりね。鼻の下を伸ばしてだらしがないわ。 あの女も生徒みたいね。歳は20過ぎってとこかしら?オバサンね。化粧もケバいわ。 胸が大きいのが癪だけど。 隣の子はあの女と正反対ね。髪も青いし背も小さいわ。あの髪って染めてるのかしら? 歳は幾つかしら?十歳くらいに見えるけど。 あら?あの女が小さい子の口を拭ってあげてるわ。結構優しいのね。 ひょっとして親子かしら?ありえるわね魔法があるんだし、歳を誤魔化せるのかも。 『私は巨乳も貧乳も、ロリも熟女も大好きだ』 聞いてないわ。 それにしてもあの子よく食べるわね。いったいどこに入るのかしら? ん?何、あのぬいぐるみ。小さい子に近づいてくわ。あ、固まった。怒られてるみたいね。 あの子、何か言ってるわ。なんて言ってるんだろ? 「おねえさまばっかりおいしいものたべてずるい!わたしもたべたい!きゅいきゅい!」 「後で食べさせてあげる」 「ほんとう?!うれしいな!うれしいな!きゅいきゅい!!」 ぬいぐるみが帰っていくわ。あの子の使い魔かな?良かったわね優しいご主人で。 『もっとも食べるのは私の真っ黒な息子だがね』 腹の中まで黒いわね。 「トリッシュ、授業が始まるから先に行ってるよ」 判ったわ。 授業ね、どうしようかしら? 『それなら私とギシギシアンアンしないかね?』 とりあえず食堂を出るとするか。スパイス・ガールお願いね。 『テメェーッ、サッサトあの世へ行キヤガレェェェェ、コノクソガアアアァァ』 『ちょ、ちょっと待ちたまえ!』 『イツマデモコノ世ニヘバリ付イテンジャアネェェーーーッ、コラァァァーーッ』 歩きながら考えましょ。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/66.html
slave sleep~使い魔が来る-1 slave sleep~使い魔が来る-2 slave sleep~使い魔が来る-3 slave sleep~使い魔が来る-4 slave sleep~使い魔が来る-5 slave sleep~使い魔が来る-6 slave sleep~使い魔が来る-7 slave sleep~使い魔が来る-8 slave sleep~使い魔が来る-9 slave sleep~使い魔が来る-10 slave sleep~使い魔が来る-11 slave sleep~使い魔が来る-12 slave sleep~使い魔が来る-13 slave sleep~使い魔が来る-14 slave sleep~使い魔が来る-15 slave sleep~使い魔が来る-16 slave sleep~使い魔が来る-17 slave sleep~使い魔が来る-18 slave sleep~使い魔が来る-19 slave sleep~使い魔が来る-20-1 slave sleep~使い魔が来る-20-2
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2498.html
ディオは追い詰められていた。――いや、機を伺っていたという方が正しいだろう。 酒を飲んでは暴れ回る父、ダリオを毒殺して七年間、生前ダリオが恩を売っていたジョースター卿の 養子となったディオはジョースター家の財産を乗っ取って世界一の男となるため、卿に気に入られるように 努める一方で卿の一人息子ジョナサンを徹底的に追い詰めて堕落させようとした。 しかしジョナサンは持ち前の前向きでどんな事にも諦めない性格により太く逞しく成長した。 だがディオは計画を変更し、ジョースター卿にダリオと同じく遅効性の毒を飲ませて殺害を謀る一方 『石仮面』と呼ばれる謎の仮面によってジョナサンを闇に葬ろうと考えたのだ。 しかし偶然見つけたダリオの手紙によりダリオの病状と父のそれとが同じ事に気づいたジョナサンは ディオの陰謀を未然に防ぎ、毒薬の入手元である中国人を捕らえて動かぬ証拠を握ると、何も知らないディオが ジョースター邸に帰ってきたところを警官隊で包囲したのである! ジョジョの奇妙な冒険 第11話 人間を超越する! 「ディオ、話はすべて聞いたよ 残念で…ならない…君のおとうさんは命の恩人…そして君には 息子と同じくらいの愛情と期待をこめたつもりだったが…寝室に行って休むよ… 息子がつかまるのを見たくはない…」 ジョースター卿は深い悲しみに包まれていた。いくら自分を毒殺しようとしたとはいえ実の息子のように 可愛がっていたディオが捕まるのを卿は見るに忍びなかったのだ。 「ジョジョ…逮捕されるよ…だがせめて君の手で手錠をかけてほしい7年間のつきあいで… わがままを言わしてもらえれば肩をケガしているんだ…きつくしめないでくれ」 ディオが哀れな声でジョナサンに語りかける。ゆれる蝋燭の明かりでその顔ははっきりとはわからない。 だがその声はジョナサンに哀れみの心を呼び起こすには十分だった。 「わかった…僕が手錠をかけよう!」 正直ディオはいけすかない奴だった。彼がジョースター家にやって来て以来ジョナサンは常にディオの嫌がらせに遭い 最後まで友情を感じる事ができなかった。でもディオは同時に七年間共に過ごした兄弟だった。 その最後の頼みを無下にする事はとてもできない…。 ジョナサンは甘い男だった。もう少し冷たい思考を持った人物なら気がついただろう。 あのディオにしては往生際が良すぎるという事に…。七年間共に暮らした男の真意に気づけなかったジョナサンは甘かった。 「ジョジョ…人間ってのは能力に限界があるなあ」 手錠を持って近づいたジョジョの目にディオの顔が写る。それは明らかに観念した顔ではなかった。 そう、例えるならば目の前に馬鹿な蛙が跳びだしてきたのを見つけた蛇のような顔―― 「おれが短い人生で学んだことは…人間は策を弄すれば弄するほど予期せぬ事態で 策がくずれさるってことだ!…人間を超えるものにならねばな…」 「なんのことだ?なにを言っているッ!」 「おれは人間をやめるぞ!ジョジョーッ!!」 ディオはマントに隠していた石仮面を高々と掲げると、同じく隠していたナイフを振り上げてジョナサンに襲いかかった。 ディオはこの一瞬を待っていたのだ。憎き敵、ジョナサンの血で人間を超越し、幾千年、何世紀もの間を 永遠に生きる吸血鬼へと変貌する瞬間を!!! だが、ディオの野望が果たされる事はなかった。 突如ディオの背後から光り輝く鏡のようなものが現れたと思うと、ディオの身体をその中へと吸い込みはじめたのだ。 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」 普段のディオならば背後からとはいえ避ける事もできたであろう。だがディオはジョナサンを殺す瞬間に意識を集中しており 背後から迫るものに気づくことはできなかったのだ! 「ディオーーーーッ!!!」 ジョナサンが手を差し伸べてディオを掴もうとする。己を殺そうとした相手をも助ける、それがジョナサンという男であった! だがディオはその手を振り払うと、目で人が殺せるのであればまず間違いなく殺せたであろう目付きでジョジョを睨み ―――そして光り輝く鏡と共にこの世から消滅した。 1889年、イギリスはとある田舎での出来事であった。 ジョナサン・ジョースター…かねてからの夢を叶えて考古学者となり、イギリス史を書き換える数々の発見をした。後に幼なじみエリナ・ペンドルトンと結婚するとアメリカに渡り、インカやマヤ、アステカの遺跡の研究に一生を捧げた。 ジョージ・ジョースター卿…息子の夢を叶える為に様々な手助けを行った。また周囲が反対する中ディオの為に ささやかな墓を作った。時折ディオの墓の前で寂しそうに佇む卿の姿があったという。1912年、アメリカに渡ったジョナサンを訪ねる途中に乗った大型客船が沈没して死亡。 ロバート・スピードワゴン…ジョナサンがアメリカに渡ると後を追うようにしてアメリカに行く。株で財をなして20世紀初期のアメリカンドリームを体現する人物となった。その独特の勘で世界大恐慌をも切り抜け、アメリカの復興に貢献した。また生涯にわたりジョナサンの研究を支援し続けたという。彼の残した組織はSPW財団となり、現在でもアメリカ経済界の中心となっている。 ジョジョの奇妙な冒険 完 「…」 「……」 「…あんた誰?」 to be continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/418.html
とりあえず、M.I.H! なに?なぜ場面をスキップするのか?だと? 逆に考えるんだ、『原作と同じシーンなど見なくていい』と考えるんだ 【逆に考える使い魔】 簡単に説明するとアッチとコッチの違いについて討論が終わったところ…納得させた方法? それはメソ…ゲフンゲフン! 知らないほうが幸せなことが世の中には存在するのだよ? そして今現在、私がしていることは… 「上手に焼けました~♪」 朝食の確保だ。不覚にも主人であるルイズの機嫌を損ねてしまった… やはりメメタァ!で起こしたのがマズかったか? あぁ、獲物を探している時に宝物庫周辺で怪しい女が挽肉になって死んでいたので土葬しておいた 後に判明したことだが、女は泥棒で 破壊のオーブとゆう名の小さい円筒の物体を盗んだそうだ 結局、メンツの問題で盗まれた事を隠蔽し、この件は幕を閉じた 今日の出来事 破壊のオーブ(旧日本軍の手榴弾)の誤作動で爆死
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/645.html
++第八話 使い魔の決闘②++ 花京院は今、ギーシュと向き合っていた。 二人の距離はおよそ十歩ほどだ。花京院のスタンドの射程距離には十分入っている。 いつでもスタンドを動かせるよう構えながら、花京院は首を巡らせた。 二人の周りには、いつのまにか観客たちが集まっていた。 平民とメイジが戦う。 そのトップニュースはあっという間に学校中に知れ渡った。 噂を聞きつけた生徒たちは一目見ようと広場に集まった。 普段は薄暗く、人気のないヴェストリの広場が、今日だけは大勢の人で溢れ返っている。 あまりの人の多さに少々呆れながら花京院はギーシュを見た。 決闘を前に、緊張しているかと思ったが、ギーシュは気楽そのものだった。 先ほどから観客たちに手を振ったり、女の子には笑みを投げかけたり、なにかと観客たちにアピールしている。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュがバラを掲げ、声を張り上げた。 たちまち人垣がどよめき、歓声が巻き起こる。 ギーシュはもう一度観客たちに手を振り、花京院に視線を向けた。 二人は広場の真ん中に立ち、にらみ合う。 「とりあえず、逃げずに来たことは、ほめてやろうじゃないか」 「逃げる必要がないからな」 「お互い準備は出来てるようだ。そろそろ始めようか」 ギーシュはそう宣言した。 始まると同時に、花京院はスタンドを出して構える。 彼のスタンド、『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』には近距離パワー型のようなパワーやスピードはないし、特別な能力もあまりない。 しかし、それだけが強さではないことを花京院は知っている。 花京院と対峙するギーシュは余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。 キザな仕草でバラを花京院に向ける。 「僕はギーシュ・ド・グラモン。栄えあるグラモン家の四男だ。たとえ相手が平民であろうと、手加減はしない」 ギーシュはバラの花を振った。 花びらが一枚、宙を舞う。 ひらひらと花びらは揺れ、次の瞬間、戦士の人形になった。 甲冑を着た女戦士の人形だ。大きさは普通の人間と同じぐらいだが、甲冑から覗く肌の色は甲冑と同色で、固い金属でできているらしい。 がしゃん、と人形が一歩前へ踏み出した。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。……おっと、言い忘れていたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 ギーシュがバラを振ると、女戦士の形をしたゴーレムが突進してきた。吸血鬼ほどの速さではないが、プロのランナーぐらいの速度はある。 花京院のスタンドは近距離を得意としない。近寄られるのは得策ではなかった。 スタンドを操作し、ゴーレムに向けて両手を構える。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの両手からエメラルドの何かが放たれる。一見体液にも見えるそれは破壊のエネルギーの像だ。触れれば砕き、貫くことができる。 エメラルドスプラッシュは真っ直ぐにゴーレムに当たり、吹っ飛ばした。 上半身を仰け反らせながら後ろに吹っ飛んだゴーレムを見て、ギーシュの顔が強張った。 「き、君は今何をした。僕のゴーレムに何をしたんだ?」 「答える必要はない……と言いたいところだが、少しだけ教えよう。僕はある力を持っている。君のゴーレムと同じだ。ただ、誰にも見えないし、触ることもできないがな」 「……」 ギーシュは無言で花京院を睨みつけている。本当か嘘か図りかねているようだ。 軽く肩をすくめるようにして、花京院は言った。 「別に信じなくていい。……ただ、これは決闘だからな」 そう、これは決闘なのだ。ただの勝負ではなく、決闘。 卑怯な手段を使って、相手を倒すことが“勝利”ではない。 正々堂々、相手を打ち砕く。それが“決闘での勝利”なのだ。 だから花京院はスタンドでいきなり攻撃しなかったし、スタンドのことを教えた。 わざわざ相手に魔法を使わせるチャンスを与えたのもそのためだ。 ……これは彼女の誇りをかけた決闘だ。 だからこそ、負けるわけにはいかない。 絶対に、勝たねばならない。 ゼロと侮辱された彼女のためにも。 「……不思議な力か。信じがたいが、本当のことなんだろう」 少々驚いた様子で、ギーシュは呟いた。 そして、バラを振り、新たに六体のゴーレムを作り出す。 「ならば、僕も全力で相手をしよう」 再度、ギーシュがバラを振ると、たちまちゴーレムは花京院に向かって襲い掛かってきた。 合計七体のゴーレムが、花京院めがけて向かってくる。 花京院はそれを視界に納めると、狙いをつけた。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの手から無数のエメラルドが飛び出す。 それらはギーシュのゴーレムに当たり、相手を後方へと弾き飛ばした。 「この程度の攻撃で、倒せるとでも思っているのか?」 「戯言は勝負が終わってから言いたまえ」 地面に倒れたゴーレムたちは起き上がり、また花京院に向かって突進する。 魔法で動いているせいか、痛みや恐怖はないようだ。その動きにはなんの迷いも怯えも感じられない。 とは言っても、動きが見えている以上、その攻撃は意味がない。 花京院はまたエメラルドスプラッシュを放った。 後続のゴーレムと派手にもつれ合いながらゴーレムは後方へと転がる。 何度も、何度も、ひたすらそれを繰り返す。 意味のない、無駄なことをなぜ続けるのか。 花京院にはそれが疑問だった。 しかも、ギーシュは笑みを浮かべていて、何かたくらんでいるようだ。 「お前が何を考えているのかは知らないが、こんな攻撃を続けるつもりなら……」 その時、花京院は気付いた。 自分とゴーレムの距離。それがいつの間にか、狭まっている。 十歩ほどの間があったはずが、今は三歩ほどの距離まで近くなっていた。 ……まずい! 花京院は距離を開けようと足に力を入れたが、動かなかった。 愕然と足元に視線を落とす。 足元の地面が盛り上がり、足首を固定するように固まっていた。それもただの土じゃないらしく、蹴ったぐらいではびくともしない。 物音が聞こえ、顔を上げると、目の前にゴーレムがいた。 危険だと感じる余裕さえなかった。 次の瞬間にはゴーレムの拳が身体にめり込んでいたからだ。 「ごふっ!」 身体の奥底に響くその衝撃に、一瞬意識が遠のく。 かろうじて意識だけは保ったが、痛みが消えるはずもない。 身体を折り、花京院は地面に膝をついた。 「なんだ。もう終わりかい?」 「……いや、まだだ」 今度はゴーレムの蹴りが飛んできた。 脇腹に当たり、その衝撃で息が止まりそうになる。 地面をごろごろと転がりながら花京院は体勢を立て直そうとするが、すぐ側には別なゴーレムが立っている。 「降参するかい?」 「するつもりはない」 ギーシュの問いに、花京院は首を振った。 すると、ゴーレムの足が花京院を蹴り上げた。 束の間、宙に浮き、地面へと叩きつけられる。 「がっ……!」 肺の中の空気が外に出される。 横向きに倒れたまま、花京院は荒い呼吸を繰り返した。 「まだやるつもりかい?」 「当たり前だろう」 ゴーレムはゆっくりと足を上げた。 踏み下ろすのだと気付いた瞬間、花京院は右腕を構えていた。 落とされた足とそれを受け止める腕。 ごきり、と鈍い音がした。 痛みはあったが、どこか曖昧なものになっていた。 ……腕が折れたな 冷静に、花京院はそう思った。 落ち着く暇もなく、ゴーレムの攻撃は続けられる。 一つ一つがプロボクサーの一撃のように重く、速い。 避けることはおろか、受け止めることすらできない。 何度も何度もゴーレムの攻撃を喰らい、そのたび花京院は吹っ飛ばされる。 ギーシュは花京院の側まで来て、見下ろした。 「いい加減、諦めたらどうだい?」 「……そうだな。その角度がいい」 花京院は口元に笑みをにじませる。 ぼろぼろになっても笑みを浮かべる花京院を見て、ギーシュは怪訝な顔になった。 「頭でもやられたのかい? なんの角度……」 その時だった。 この勝敗は明らかに見えるこの状況の中、花京院だけは見えていた。 勝利でもなく、敗北でもなく、ただ今だけを見ていた。 スタンドがギーシュの口の中へと入っていく、この瞬間を。 狙っていたのは……この時だった。 To be continued→
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1907.html
任務を果たし、フーケは気絶している間に校舎内にある牢の中で捕縛しておいた。 ジャッジメントを出せても、本体が動けなければ脱獄は不可能、という理由でだ。 つまり手錠でフーケを柱に固定してあるのは決してオスマンの趣味でも性癖でもない。たぶん。 「なるほど、スタンドか…」 校長室で任務を終えてきた4人の話を聞く。 「なにか心当たりでもあるんですか?」 キュルケがオールドオスマンに尋ねる。 「うむ、ないことも無いが、明言は避けておこう…じゃが、近いうちに何か伝えられるよう努力しよう。 そして、『土くれのフーケ』捕縛の功で『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。 ただし、ミス・タバサはすでに『シェヴァリエ』の爵位を持っているからにして、精霊勲章の授与の申請をしておいた」 三人の顔が輝く。タバサは無表情のままだったが。 「本当ですか!」 キュルケが声を上げる。 「ああ、本当じゃ。そして君達は今日の『フリッグの舞踏会』主役も勤めてもらう。明日からもその勢いで勉学も頼むぞ。 とにかく、我が友人の命を守ってもらったことについて、心より感謝させてもらう」 全員が感謝を言葉をオールドオスマンに投げかけ、全員が部屋から出て行こうとする。 「おっと、ミス・ヴァリエールには話があるので残ってくれないかな」 部屋を出ようとしていたルイズは怪訝な顔をしつつも、きびすを返す。 ルイズ以外は部屋から出て行き、扉が閉まる音がする。 ルイズは不安そうに尋ねる。 「も…もしかして、退学ですか…?」 オスマンは吹き出す。 「カッカッカ、そんな心配は無用じゃ。第一退学になる生徒のために爵位申請などするものか!」 ルイズの表情が和らぐ。 「話というのは、君の使い魔のことじゃ。ワムウ、と言うらしいが…彼は何者なんじゃ?」 「は、はあ…私にも少ししかわかりませんが…どうやら異世界から来たらしくて…」 その答えにオスマンは驚く。 「なんと、異世界からとな…もしかして『地球』だとか『ドイツ』などとか言っていなかったかね?」 「『ドイツ』はわかりませんが…『地球』を知らないのか、と尋ねられたことはあります」 オスマンは少し考え込む。 「実はな、あの破壊の杖も、護衛を依頼した男も異世界…つまり『地球』から来たらしいのじゃ。わしも 彼にその話を伝えておくから、君からも詳しい話を使い魔君から話を聞いておいてくれ」 「は、はい、わかりました…善処はします…」 命令をまったく聞かない使い魔を問い質すなどできるのだろうか、という思いが強いが一応承諾はする。 「そして…もう一つ…驚くと思うが…あの使い魔のルーンは始祖ブリミルの使い魔の一体、『ガンダールヴ』のものじゃ。 なんでも、どんな武器でも自在に操ると言う。この事は基本的に他言無用じゃ」 「ほ、本当ですか!」 ルイズは驚いて、過去のワムウを思い出すが武器を握っていたのは武器屋にいったときだけで、使いこなしていた描写を 思い出せない、というかない。あのボロ剣が使い手、とか言っていたような気もするがあの剣はそこまで博識には見えない。 「ああ、本当じゃ…まあこの話題はおいておいて、そろそろ君も舞踏会を楽しんでくるといい、ご苦労じゃった」 「はい、それでは」 ルイズが出て行き、扉が閉まる。 「それにしても…異世界の住民…ワムウ…超人的…男の言っていた『柱の男』そっくりじゃ……偶然とは思えんし、 もしかするとミス・ヴァリエールはわしらが思っていた以上にとんでもないものを召還してしまったんじゃろうか… まるで爆弾じゃな…ミスタ・コルベールすら相手にならない以上、湿気ってることはないようじゃしな…」 オスマンはため息をつき、窓の外の二つの月を眺めた。 * * * 「あら、退学じゃなかったの?」 律儀にルイズを待っていたキュルケとそれに付き添っていたタバサ。 「大きなお世話よ、それよりワムウしらない?」 「あら、あなた自分の使い魔も呼び出せないの?」 「呼び出せるだけのただのサラマンダーとは違いますからね」 「あら、言ってくれるわね?」 「なんたって、私の使い魔はガンダ・・・」 他言無用と言われたのを思い出して口をつぐむ。 「ガ、ガンダムなみに強いんですからね!」 その発言にキュルケが固まる。 (な、なにを言っているのこの子…?ルイズはこんなときに意味の無いことを言うような女ではない!) 「ど、どうしたのキュルケ急に黙っちゃって…?タバサ、なんで黙ったかわかる?」 (『機動戦士ガンダム並に強い』…『軌道戦士並に強い』…『軌道は強い波で戦死』…『この星の軌道が崩壊』!? そ、そうか…そういうことだったのか!!またも関わることになるというのか!!ノストラダムスの大予言!) 「私にだって…わからないことぐらい…ある……」 「そ、そう…」 そこにギーシュが入ってくる。 「やあ!フーケを倒した立役者!主役!ギーシュの登場の時間だよベイビー!」 「ねえ、ギーシュ、ワムウ知らない?」 「ワムウかい?見なかったが…そんなことより舞踏会がもうすぐ始まるよ?遅れる前に着替えてきたほうがいいんじゃ…」 ルイズは壁の時計を見る。 「あああ!もうこんな時間じゃない!ワムウとあんたのせいよ!早く着替えてこないと!」 なぜか意味もなく突き飛ばされるギーシュ。 彼はつぶやく。 「やれやれ、僕の見せ場はまだかなあ…」 * * 「ヴァリエール公爵の息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのおなーーりーーッ!」 衛士がルイズの到着を告げ、楽師が音楽を奏で始める。 周りの男が群がるが、全員断りバルコニーに行く。 「あら、ワムウあんた来てたの」 バルコニーの先の木に立っているワムウ。 「騒がしかったんでな、なんの騒ぎだこれは」 ルイズに尋ねる。 「舞踏会よ、ちょっと任務で活躍してね、私たちが主役よ」 「そうか」 「なによ、少しくらい誉めてくれたっていいじゃない」 「引き受けた役目を終えるくらい当然だ」 「言ってくれるわね、あんた、あとで部屋にちゃんと着なさいよ、話があるから」 「気が向いたらな、それよりお前は主役なら踊らないのか」 「掌を返して媚を売るような奴らしかいない間はお断りよ」 「表面しか見ないような奴など爆発させればいいだろう」 「やあルイズとその使い魔、ごきげんよう。どうだい僕と踊らないかい?」 空気を読まずにギーシュが話に割り込んで来る。 「あら、丁度いいわね、ワムウの言う通りにしてみましょうか?」 「その役目は私よ」 モンモンラシーが腕を組んでギーシュの後ろに立っていた。 「あらモンモンラシー、私もちょっと一番働いてないのに主役ぶってるのがちょっと鼻についててね… 『抜きな! どっちが速いか試してみようぜ』……ってヤツだわ」 「え…ちょっと待っ…」 「『爆風』で『発破』すると書いて『爆発』!」「ビンゴォ!舌を引きちぎった!」 ギーシュはバルコニーから吹っ飛び、墜落した。 「ひでぶッ!」 ワムウがギーシュに呟く。 「しかし人間よ、これだけは覚えておけ。人間負けてしまったら負けだ」 なぜかワムウも一発殴る。 ギーシュ――完全敗北。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1319.html
一人! 使い魔が征く! 人気の無い寺院の中、承太郎はルイズを抱き上げて振り返ると、 いつの間にか扉の前に立っていた個性的な髪型の男に気づく。 「承太郎さん……これからどうする気っスか? 七万の軍隊を足止めしないと、連合軍は壊滅確定っスよー」 「仗助か……。丁度いいところに来た、頼みがある」 「おッ! さっすが承太郎さん! 何か『策』があるんスねッ!」 もう勝利したも同然とばかりに楽観的な笑みを浮かべる仗助を連れて、 承太郎はルイズをお姫様抱っこしたまま寺院から出た。 そこには仗助の風竜アズーロが待っていた。 「仗助……。お前はルイズを連れて、ギーシュかシエスタのいる艦に戻れ」 「……援軍を呼ぶんスか? それはちょっと難しいんじゃ……」 「アルビオン軍は……俺一人で足止めする」 「……は?」 仗助は耳を疑い、顔をしかめた。 「すいません……ちょっと言葉の意味が理解できなかったっつ~か……」 「聞こえなかったのか? アルビオン軍は俺一人で足止めする。 お前はルイズを連れて艦隊に帰って、一緒に逃げるんだな……」 あまりにもプッツンした発言に仗助はめまいさえ起こした。 あの冷静で判断力に優れる承太郎さんが、なぜ自殺まがいの戦いに挑むのか? 「いったいどうしちまったんスか!? そんな無謀なセリフ、承太郎さんのキャラクターじゃないっスよ~!! 無敵のスタープラチナとガンダールヴでも、敵は七万、絶対殺されるっス!」 「何を勘違いしてやがる、俺はおめーの知ってる空条承太郎じゃあねえ。 お前と同じ高校生で、ガンダールヴの承太郎だ」 承太郎はルイズを仗助に向かって差し出すが、仗助は受け取ろうとしない。 「冗談じゃないっスよ~! 例え十七歳の承太郎さんでも、 俺にとっては誰よりも頼りになって尊敬できる人なんスから!」 拒絶の意を示した仗助を見ると、承太郎は無言でルイズを地面に寝かせた。 「俺は馬で行く。ルイズをここに置いてくっつーなら勝手にしな」 「……グレート。他に言葉が出ねー……」 「あばよ、仗助」 馬に乗るべく承太郎が仗助に背中を見せた瞬間、仗助はスタンドを出し殴りかかった。 「ドラァッ!」 間一髪、承太郎は半身を引いて拳を回避したが、 学ランにつけてある鎖を根元近くから真っ二つに割った。 ジャラジャラと音を立てて鎖が地面に落ちると、承太郎は鋭い双眸を仗助に向ける。 「力ずくで止めるつもりなら……相手になるぜ」 しかし仗助は両手を上げて降参の合図。 「いえ、奇襲が失敗した今……スタープラチナに肉弾戦で勝てるとは思ってないっス。 ルイズさんは責任持って艦に送り届けますから……死なないでくださいよ」 身長の低いルイズを小脇に抱えながら、仗助はちぎれた鎖を拾ってポケットに放り込む。 「それじゃ、ルイズさんは責任を持って預からせていただきます」 「……適当に引っ掻き回したら逃げるから安心しな。 おめーとは日本に帰ってから、改めて話をしたいからな……」 承太郎は馬に、仗助はルイズを抱えて風竜に。 承太郎は戦場へ、仗助は撤退する艦へ。 逆方向へと分かれ、向かっていった。 地図に記された小高い丘の上、朝日が暗闇に光を与えていった。 視界が開け、眼下にはタルブの村のような美しい草原が広がっている。 さらにその向こう、朝もやの中からアルビオンの主力軍が進行してきた。 承太郎は馬を逃がすと、デルフリンガーを抜く。 「意外だねぇ。相棒は精神を操作されてるってのが嫌だったんだろ? なのに何でこんな事するのかね。相棒は強いのは認めるけど、間違いなく死ぬぜ」 「……だろうな。だが、俺は仲間を二度と死なせたくない……。 その気持ちだけは、ルーンに操られたものじゃあない俺の意志だと確信を持てる」 「その確信のために戦うのかね。いや、立派、お見事。 そんな相棒のために俺がとっておきのアドバイスしてやる。 真っ直ぐ突っ込め。こうなったらどっから行っても同じだからよ。 そんでもって指揮官狙いまくれ、頭をやれば身体は混乱するし足も止まる。 一日ぐらいの時間は稼げるかもよ。時間を止めながらなら何とかなるだろ」 「……行くぜッ!」 「おうッ!」 朝もやをついて突っ込む承太郎に最初に気づいたのは前衛の捜索騎兵隊ではなく、 後続の銃兵を指揮する士官の使い魔のフクロウだった。 「……何、一人だと?」 敵が一人である事をいぶかしく思いながらも、馬のような速力に驚き、 銃兵に弾込めを命じた。その間に承太郎は捜索騎兵隊を斬り飛ばす。 あまりの速さに騎兵隊はタイミングを見誤り、一方的に馬から落とされてしまった。 さらに銃兵が弾を装填する前に仕官を発見すると、杖を持っている手を剣で切断。 慌てて銃兵達が承太郎に向けて発砲するが、 気がついたら承太郎は土煙を残して消え去っていた。 使い魔を使役し上空から承太郎の姿を見ていたメイジ達は、 承太郎が物凄い勢いで空に跳び上がった事に驚愕した。 「オラァッ!」 腕からわずかにスタープラチナの腕だけを浮かせた承太郎は、 銃弾を指で弾き四方八方へと飛ばして使い魔と思われる鳥を次々に撃ち落とす。 承太郎が地面に着地するタイミングを見計らって他のメイジが魔法を放つも、 それらはすべてデルフリンガーの口に吸い込まれて消えてしまう。 着地した承太郎は一足飛びに騎兵隊の隊長へ肉薄してスタープラチナの拳を叩き込んだ。 承太郎は時に跳び、時に駆け、敵軍を翻弄する。 単騎であったため同士討ちを避けるべく銃や投射武器の発砲が禁止され、 メイジ以外の兵隊はガンダールヴの承太郎相手に接近戦をしいられた。 だが兵士達は平民には見えないスタンドの拳の弾幕により四方八方へ吹っ飛ばされる。 吹っ飛んだ兵士の重量を受け、他の兵士にまで被害が及ぶ中、 メイジ達は次々に承太郎へと魔法を放った。 さすがにガンダールヴの速度を持ってしても受け切れない数だが、 スタープラチナの髪の毛が逆立つと同時にそれらは空中で停止した。 「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」 氷の矢、炎の球、風の刃、すべてが静止した中、承太郎はスタープラチナで地面を殴る。 「オラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」 あっという間に承太郎の周囲はめくり返された土で覆われ姿を隠すと、 地面すれすれを駆け抜けながら銃弾を指で弾き飛ばし、ターゲットに向かって疾駆する。 時が動き出した直後、突然現れた土の幕に魔法が命中する。中身は当然空っぽだ。 承太郎を見失ったメイジ達は慌ててその姿を探すが、その身体に突然銃弾が命中する。 時間を止めている間に承太郎が放ったものだ。 当然銃声など無く、メイジ達は何にやられたのかすら理解せぬまま倒れた。 「オオラァッ!」 マンティコアにまたがった偉そうな騎士を発見した承太郎は、 デルフリンガーを横薙ぎにして周囲にいた兵士を吹っ飛ばす。 騎士はマンティコアを承太郎にけしかけるが、 鋭い牙を生やした口がスタープラチナのアッパーで無理矢理閉じられ、あごが砕ける。 マンティコアから落っこちた騎士の足をデルフリンガーで深く斬りつけた承太郎は、 続いて槍ぶすまを作っている部隊へと跳躍した。 槍ぶすまを飛び越えられ、指揮官のメイジは咄嗟に詠唱するが間に合わず、 スタープラチナで顔面を踏みつけられて昏倒、顔を足場にして承太郎は再び跳躍した。 弓兵隊を指揮していた若い士官は慌てていたため、誤って弓の発射を命じてしまった。 上空から舞い降りる承太郎は自分に命中する矢だけを狙い、 スタープラチナの拳の弾幕で撃ち落とす。はずれた弓は味方に辺り同士討ちが始まった。 お礼とばかりに承太郎は銃弾を指で弾き飛ばし、弓兵隊の仕官の肩を射抜く。 着地した承太郎は、近くにいた兵士達を剣で薙ぎ払った。ただし峰を使ってだ。 「相棒! さっきから致命傷を与えねーように戦ってねーか!?」 「俺の敵はクロムウェルとレコン・キスタだ! アルビオン軍じゃねーぜ!」 まるで流星のように承太郎は戦場を駆け抜ける。 近距離をデルフリンガー、中距離をスタープラチナ、遠距離を銃弾で攻撃し、 敵軍の放つ魔法を回避しきれない状況に陥った時のみ時間を止める。 突然消え、突然現れ、あるいは気がついたら倒されていたりと、 アルビオン軍は時間の経過に比例して混乱を高めていった。 その混乱が、歯車を狂わせる。 完全に指揮を失ったメイジ達が、連携も何もない滅茶苦茶な魔法を放った。 時間停止は、一度行うと再び行うためには数呼吸分の休息が必要だ。 だから時間停止せずに対処できる攻撃はできる限りスタンドとデルフリンガーで防ぐ。 そのようにして承太郎は斜め前方から飛んできた無数の氷の槍を拳の弾幕で叩き落し、 左側から飛んできた巨大な炎の球、恐らく火の三乗くらいの威力だろう、 それをデルフリンガーの口で素早く吸い込ませる。 直後、右の脇腹が突然裂けた。 「な……にィッ!?」 隊列を乱してしまい偶然承太郎の背後を取ったメイジが、エア・カッターを放ったのだ。 承太郎、スタープラチナ、デルフリンガー、三つの目を持つ彼等が、 戦場の中で偶然生んでしまった死角にそのメイジはいたのだ。 「今だ! やれ!」 メイジの一群の中から号令が聞こえ、メイジ達が次々と魔法を放つ。 氷の粒を孕んだ風が左足を切り刻み、スタープラチナの右肩を火球が焼く。 「くっ……スタープラチナ・ザ・ワールド!!」 咄嗟に時を止め、先程号令をかけた男へと向かって承太郎は跳び上がる。 あれほどの数のメイジに守られている男、恐らくこの大軍を率いる将と見た。 ならばそいつさえ倒せば軍の混乱は頂点を極めるだろう、後は逃げるだけだ。 しかし負傷のためか、連続して時を止めて戦った疲労のせいか、 敵大将を射程圏内に納めるよりも早く時間停止は解除される。 突然前方から飛んで迫ってくる承太郎の姿に気づいた将軍は、素早く杖を抜いて詠唱。 妨害すべくスタープラチナで銃弾を一発弾き飛ばすが、 将軍はその弾道を見切ると杖で叩き落すした。 承太郎と将軍の距離が詰まる。 「スタープラチナ!」 「エア・カッター!」 風の刃がスタープラチナの強靭な肉体を切り裂いていく、 それでも承太郎は止まらず将軍に拳をマシンガンのように浴びせると、 着地に失敗してその場に転がった。 将軍も吹っ飛ばされ気絶してしまったため、連合軍撤退までの時間稼ぎは成功した。 が、この場で戦闘不能に陥った承太郎の末路はたったひとつしかなかった。 「ぐっ……」 学ランを血でにじませる承太郎に、将軍の周囲を固めていたメイジ達が杖を向ける。 (これ……までか……) デルフリンガーを握っていても、身体の痛みは引かないし力も湧いてこない。 「もう駄目だね。相棒、さよなら」 別れを告げるデルフリンガー、メイジ達の詠唱が終わるのを待つ承太郎。 その時、ほんのわずか……誰も気づかない程度だが、承太郎達の身体に薄い影が落ちた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2043.html
12話 嵐のような夜は明けて、朝が来た。 「新しい朝が来た、希望の朝が・・・」などというフレーズもある朝だが、 残念ながらこの日の朝は希望もなければスガスガしくもなかった。 トリスティン魔法学院長のオスマンにとっては特に。 「……それで、ミス・ヴァリエールが不届き者に襲われとったのにも、 土くれのフーケが宝物庫を襲って『破壊の杖』を盗んでいったのにも……。 だーれも気づかんかったと、そういうわけじゃな?」 オスマンが眉間に皺を寄せながら目の前に並ぶ教師一同を見回す。 教師達は皆が一様に肩をすくめるだけで、何も言おうとしなかった。 その反応を見て、オスマンは深いため息をついた。 メイジには主に2種類のタイプがある。 一つは軍人のように、魔法を戦うことに使うことを得手とするタイプ。 もう一つは、戦いは得意とせず、あくまで魔法を研究することに長けるタイプ。 この魔法学院にいるのは当然後者ばかりで、 「魔法殺し」や「土くれ」のような名だたる殺し屋、盗賊と渡り合えるような猛者がいないことぐらい、 オスマンだって分かっていた。 分かっていたが…これほどの体たらくだとは思いもしなかった。 ルイズの部屋に侵入した不届き者と戦い、重傷を負ったキュルケとタバサの方が、 こいつらよりもよほど貴族らしいのには間違いあるまい、とオスマンは深く思った。 「ハァ~~……もうよい。君たち、ちょっとそこに立っとれ。 ああ、それとミス・ヴァリエール。スマンの、ワシら教師がこんな有様で」 「い、いえ……」 オスマンの丁重な物言いにどぎまぎするルイズ。 オスマンはそれを見て目を細めると、その隣に立っているギーシュとモンモランシーに目を向けた。 「それとミスタ・グラモンにミス・モンモランシ。 君らが不届き者の事と『土くれ』の件を伝えてくれておらねば、事態はもっと悪化しておったやもしれん。 礼を言おうかの」 「い、いえ! そんな……」 「いえ、オールド・オスマン! レディを守る事は騎士の務め! ですのでこの程度のこと、礼には及びません」 モンモランシーが白い目でギーシュを睨む。 でもギーシュは気づいていないようで、調子よさそうにニコニコしていた。 「それは何よりじゃ。 ……さて、ミス・ヴァリエール。 昨日の事をもう一度、今度は簡単に話してもらえるかね?」 「はい。えっと、私が寝てたところでいきなりホワイトスネイクが大声出したからそれで目が覚めて、 その後不届き者とホワイトスネイクが戦ってたらキュルケとタバサが入ってきて……」 余談だが、ルイズがタバサの名前を覚えてるのは先ほど事件の概要をルイズが説明した際、 タバサを「青髪の女の子」と呼んだのをオスマンに訂正されたからである。 「それでキュルケとタバサがいきなり浮き上がって、苦しそうにしてて……」 「……もうよい、ミス・ヴァリエール」 ルイズのあまりの説明下手にオスマンはたまらず待ったをかけた。 先ほどのルイズの説明も、オスマンをもってしてもまったく理解できなかったために 待ったがかかった次第だというのに……。 とは言ってもハルケギニアには無重力の概念すらないのだから、 結局のところルイズでなくともあの戦いを性格に説明する事は困難であろうが。 「……あ~、その、なんじゃ。 さっき君は『ホワイトスネイクと不届き者は知り合いのようだった』と言ったのう?」 「ええ、そうですけど」 「ここは、ホワイトスネイク君に話してもらうのが分かりやすいかもしれんの」 「イヤです」 ルイズは間髪いれずに拒否した。 「わたしが話します。わたしが当事者ですから」 「でも君の言う事はちょっと分かりにくいんじゃよなあ……話を早く進めたいってのもあるしの。 ホワイトスネイク君を……?」 「いいです。わたしがわかりやすく話します」 ルイズがホワイトスネイクに説明させたがらないのは、単に「使い魔より説明下手」と思われるのがイヤなだけで、 決してホワイトスネイクを邪険に扱おうとする意思があるわけではない。 ないのだが、誤解されても仕方の無い状況になってきている。 「……そうかね。じゃあ、もっと分かりやすく頼むよ」 「はい。 まずホワイトスネイクが大きい声出したからそれで目が覚めて、ホワイトスネイクと不届き者が戦い始めて、 その後にキュルケとタバサが助けに来てくれたんだけど不届き者にやられそうになっちゃって、 それでわたしとホワイトスネイクがそれを助けに行って……ここまでしか覚えて無いです」 オスマンは椅子から滑り落ちそうになった。 (な、なんで一番肝心なとこを覚えとらんのじゃろうな? やっぱり使い魔の方に説明させるのが正解じゃったかの……?) 「あ~、ミス・ヴァリエール。わしが聞きたいのはその先なんじゃが……」 「……ホワイトスネイク」 ルイズがぼそっと自分の使い魔の名を呼んだ。 直後、ルイズのすぐ傍に屈強な体躯を持つ亜人――ホワイトスネイクが現れる。 あの戦いから半日を経たホワイトスネイクの体には今も無数の傷が残っており、 特にジャンピン・ジャック・フラッシュの拳に貫かれた腹部の傷は殆どそのままで残っていた。 「状況ハ理解シテイル。ルイズノ代ワリニ、昨日ノ一件ノ説明ヲスレバ……」 ドグシャアッ! 「ッ!! ナ、何ヲスル! イキナリスネヲ蹴ッ飛バスンジャアナイッ!」 「あんたが聞かなくてもいいところを聞いてるからよ!」 「ダッタラ口デ言エ口デ! 何デ一々私ニ当タロートスルンダ!」 「何よ、ご主人様の教育方針にケチつけようって言うの!?」 「コンナヤリ方ニケチツケナイ奴ガイルト思ッテンノカッ!」 出てきた直後からぎゃあぎゃあと口論を始めるルイズとホワイトスネイク。 目の前のオスマン、隣のギーシュとモンモランシーはもちろん、周りにいた教師一同も、思わず目を覆った。 ルイズとホワイトスネイクが、二人してあまりにも子供じみていることに。 「……もう、いいかの?」 オスマンはまたため息をつきながら二人に声をかける。 その声でルイズははっとした顔になると、すぐにホワイトスネイクの足を踏んづけて黙らせる。 ホワイトスネイクは苦悶と理不尽への怒りを滲ませた表情プラス不満たらたらの視線をルイズに向けたが、 ルイズは完全にスルーした。 「ではホワイトスネイク君。 まず、ミス・ヴァリエールの話では、昨日の不届き者とは知り合いだったそうじゃが……本当かの?」 「本当ダ。奴ノ名ハラング・ラングラー。 私ガ最期ニラングラーニ会ッタ時ハトアル場所ノ囚人ダッタ男ダ」 「囚人、か。 ではこちらが不届き者について知っておることを言おうかの。 彼奴の名はラング・ラングラー。君が知っておる名と同じじゃな。 彼奴は囚人などではなく……殺し屋じゃった。 それも『魔法殺し』などと呼ばれてメイジとの戦いを得手とする、何とも風変わりな殺し屋だったそうじゃ。 最も『メイジ殺し』などと呼ばれる腕の立つ傭兵もいることにはいるが……彼奴の強さはそんなレベルではなかったと聞く」 「『魔法殺し』?」 ホワイトスネイクがおうむ返しに聞き返す。 「そうじゃ。 これは彼奴に襲われながらもかろうじて逃げ延びた魔法衛士隊の青年の話じゃがな……。 まず風と火の系統は魔法自体が完成せず、 水と土の系統は魔法を完成させられても、完成させたものをコントロールすることが出来んそうじゃ」 「そ、それって、メイジの天敵みたいなものじゃないですか!」 オスマンの突拍子も無い話に、思わずルイズか声を上げる。 「風と火はダメ、か。 どうりでキュルケたちが負けるわけね」 「水と土はコントロールできない……コントロールできないってことは、どういうことだ?」 「あんたのワルキューレとか私の水が思うように動かないってことでしょ」 「あ……なるほど」 そして同様に話を聞いていたギーシュとモンモランシーも、 「魔法殺し」の恐るべき能力を想像していた。 ギーシュは頭の弱さを露呈しただけだったが。 「しかし、何故そのようなことになるんでしょうな……?」 教師の一人であるコルベールが疑問の声を上げた。 彼の前頭部は今日も目映く輝いている。 「それがのう、一体彼奴が何をやったのかは青年にもちっとも分からんかったそうでの……全く恐ろしいことよ。 ホワイトスネイク君は何か分かるかの?」 「『無重力』ダ」 ホワイトスネイクが即答する。 「『むじゅーりょく』? 一体何かの? それは」 「私ガイタ世界デノ概念ダ。 話シテモ時間ガカカルカラナ……先ニ昨日ノ件ノ説明ヲ済マセタイ」 「そうかね。じゃあ頼むよ」 「ルイズニ2人ノ救出ヲ頼マレタ私ハソノヨウニシテ二人ヲ助ケ、ソノ後ラングラーニ止メヲ刺ソウトシタ。 ダガソノ際、ラングラーガ部屋ノ壁ヲ壊シテ部屋カラ脱出シタノデ、私ハソレヲ追ッテラングラーニ止メヲ刺シタ。 ソノ後フーケトヤラガ巨大ナゴーレムトトモニ現レテ宝物庫ニ侵入シ、何カヲ奪ウト去ッテイッタ」 三行で説明しきったホワイトスネイク。 流石である。 「ふ~む……なるほどな。 君は見たところ傷だらけじゃが、それはラングラーと戦った時に負った物かね? 随分痛そうじゃが……」 「問題無イ。モウ半日アレバ全快スル」 「……そんなに早く治ってしまうもんなのか。流石は亜人、といったとこじゃのう」 オスマンは一端そこで言葉を切ると、 「とりあえず、ラング・ラングラーのことはもういいじゃろ。 あとでまたホワイトスネイク君から聞けばよいしな。 と、なると……次は『土くれ』じゃな」 そう言って、またため息をついた。 正直な話、こちらのほうが重大な話だった。 いくらルイズが名家の出身だといっても極端な話をすれば、所詮は生徒一人の話。 であるのに対し、こちらは王家より預かった二つと無い宝物を盗人に汚されたという、 言うなればトリスティン魔法学院のコケンに関わる話だからだ。 「フーケガ逃ゲタ先ハ分カッテイルノカ?」 「今ミス・ロングビルが調べとるとこじゃ。 書き置きにはもうそろそろ帰ってくる、とあったが……まだかの?」 「ソノロングビル一人デカ?」 「そうじゃ。それがどうかしたかの?」 「…………」 この時点で、ホワイトスネイクはロングビルがフーケなのではないか? という疑いを持った。 「書き置き」とオスマンが言ったからには、 恐らくオスマンが気づいた時点でスデにロングビルは学院内にいなかったのだろう。 そして土くれのフーケを探すために外に出ているのはロングビルただ一人。 これがどうかんがえてもおかしい。 あれだけのサイズとパワーを持ったゴーレムを使役する盗賊メイジに対し、 たった一人で調査を敢行したのか? 「貴族のプライド」だか何だかのためにも、 例え自分一人であったとしても土くれのフーケに挑まないわけには行かなかったのです! とか言ってしまえばそれまでだろうが、 合理主義者のホワイトスネイクからすれば、明らかにこの行動は不審そのものだった。 「オールド・オスマン、ただいま戻りました」 と、その時。 実にいいタイミングでロングビルが帰ってきた。 「おお、帰ってきたか。で、フーケの居場所は分かったかの?」 「はい。近在の農民に聞き込んだところ、 近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。 恐らく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと思います」 「そこは近いのかね?」 「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」 「すぐに王宮に報告しましょう!」 コルベールが声を上げる。 だがオスマンはそれを制すると、 「いや……それでは時間がかかりすぎる。 そんなことをしとる間に、フーケはもっと遠くへ逃げてしまうじゃろう。 破壊の杖と一緒にな。そこで……一つ、わしから提案がある。 この事件、我々魔法学院の者で解決してみようじゃないか」 教師たちがいっせいにどよめき始める。 「ではこれから捜索隊を編成する。我こそは、と思う者は杖を掲げよ」 オスマンが静かに言った。 しかし誰も杖を上げない。 教師たちは互いに顔を見合わせ、皆が皆「お前が行けよ」という顔をしていた。 「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名を上げようと思う貴族はおらんのか!」 オスマンがそう言って、今日何度目かの深いため息をつこうとしたその時だった。 杖が一つ、掲げられた。 それを見て、教師たちが水を打ったかのように静まる。 杖を掲げたのは教師の誰でもない。 他の生徒達から「ゼロ」と蔑まれ、しかし誰よりも貴族であろうとするルイズだった。 「ミス・ヴァリエール、あなたは生徒ではありませんか! それに昨晩不届き者に襲われたばかりだというのに、おやめなさい!」 ミセス・シュヴルーズが声を上げるが、ルイズは動じずに言い返す。 「誰も掲げないじゃないですか」 「ルイズ、悪イ事ハ言ワナイカラ止メテオクベキ……」 「あんたはお呼びじゃないのよ」 ダメだ、こいつ。はやく何とかしないと……。 ホワイトスネイクがそう心中で呻いたその時、 「ミスタ・グラモン、君まで!」 ルイズの隣にいたギーシュまでもが、杖を掲げていた。 「グラモン家の家訓は『命を惜しむな、名を惜しめ』ですよ、コルベール先生。 か弱いレディがフーケ討伐に名乗りを上げるのに、男の僕がどうしてそれを躊躇えましょうか」 そういって、キザに決めるギーシュ。 キザに決めてるのにどこか抜けてる気がしてならないのはご愛嬌。 「…も、もう! ギーシュじゃ心配だから、わたしも行くわ!」 そしてモンモランシーも杖を掲げた。 「正気ですか、オールド・オスマン! 悪名高いフーケの討伐に年端もいかない生徒を向かわせるなんて!」 コルベールがオスマンに強く抗議する。 「いや、そうは言ってものう、コルベール君。 それにこの面々、中々期待できる面子では無いかね? ミスタ・グラモンは軍人の家系、グラモン家の人間、 ミス・モンモランシは代々水の精霊との交信を任された、いわば水のエキスパート。 ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女ときておるし、 彼女の使い魔のホワイトスネイク君は『魔法殺し』を単身で仕留めたのじゃぞ? 土くれ相手とは言え、不足はあるまい」 「そうは言ってもですね……」 コルベールはまだ煮え切らない様子だったが、 結局この場にいた教師は一人も名乗りを上げなかったため、 反対にフーケの犯行現場に居合わせた3人の生徒がフーケ討伐に向かう事となった。 しかしホワイトスネイクはその3人の面子を見回して、一言。 「全滅スルゾ」 メメタァッ! 「グオ、ォ……」 「縁起でもない事言うんじゃないわよ!」 「ワ、私ダッテマダ全快ジャアナインダ……本当ニ全滅シカネナイカラソウ言ッテイルノニ……」 To Be Continued...